長編小説企画書

■タイトル

『ガラスのくつ ~アイドル残酷物語~』

 

■対象読者

成人男女

 

■新人賞投稿先

未定

 

■ジャンル

エンタメ、文芸

 

■テーマ

社会で非を犯した者を容赦なく罵倒し誹謗中傷を浴びせる醜さ、悔いてなお罵倒を浴びる者の悲哀、陽の当たる場所へ二度と立たせてもらえぬ冷酷さがテーマ。
読者に対して「お前はこういう誹謗をしたことはないか、悪党だからと足蹴にして嘲笑を浴びせたことはなかったか、哀れみも感じず誹謗を浴びた者の末路など考えもせず捨て置いて忘れていなかったか」とプロローグで突きつける。

ストーリー上では、転落してゆく者の悲哀と焦燥、諦観を描く。背信を犯した歌姫は罵倒され、最初は高慢さゆえに反発するが、アルツハイマーの忘却によって次第に憎悪を受けることを生き甲斐として諦観する。
落ちぶれた先で愚者の愛に救われ、歌とは何のために誰のためにあるのかを悟り、再起を乞うが、最後までその努力が報われることなく、死による救済へと至る。

 

●起承転結

【起】
アルツハイマーの発症によるスキャンダルによって莉莉亞は芸能界から実質的に追放され、社会的に吊るし上げられ制裁を受ける。
トップアイドルへ還る、という目標が明示される(同時にプロローグでそれが果たされないことも)

【承】
再起に向け活動するが容赦ない誹謗中傷を受け、ことごとく失敗する。それを恨み、芸能界への復帰に必死に執着する。早く戻らなければという狂いそうな焦慮の中で、次第に零落(落ちぶれる)してゆく
ラノベ読者の好む「ザマァ」を被害者目線で突きつける)

【転】
アルツハイマーによって次第に執着が薄れ、怨嗟も忘却してゆく。ラノベでいう「反省した悪女」としてもう一度歌う機会を乞うが、世間はそれを欺瞞と嘲笑って許さない。主人公は絶望の中で得た悟りを愚者(ファン)へ語り、励まされて努力と誠実で再起を図る

【結】
アイドルグループ「ラ・クロワ」新規メンバーのオーディション。
主人公は周囲の理解を得られず、あと一歩で再起は失敗する。(実はオーディションは出来レースでデビューする歌手は利害関係で決められている。※ここには某小説コンテストに対する皮肉も含めてもいいかも)優勝した歌手(萱仲あずさ)は腑に落ちないが口を閉ざす。

たくさん得た喜びも悲しみ。しかしそれもいつか忘れるだろうという諦観
たった一人残ったファンへ残された己自身で報い、解脱した主人公は幻想へ手を伸ばし死による救済を迎える

 

 

【起】転落の始まり
表現するもの「目標(アイドル復活)の提示」「死の暗示」「凋落」
・「私はラクロワのセンターなのよ!みんな中で待ってるのに何故ステージに上がれないのよ!」
・自分も立っているはずのラクロワのコンサートで莉莉亞抜きの再出発宣言。姫咲莉莉亞は前日、イベント中にタブーと認識していたはずの恋人の存在を暴露していた。何故口にしてはいけないことを忘れていたのか。莉莉亞は謹慎処分を受けていたが、再出発宣言にを目にして狼狽し、強引に会場へ向かったが入れてもらえない。
・恋人だったはずの男はイベントで莉莉亞の発言を否定し、逆にファン全員を恋人とブチ上げてイベントを成功させ、ネット上で私たちの大勝利!莉莉亞敗北!とファンから揶揄される
・ファンのアツシは必死に「莉莉亞を信じよう、きっと何か理由が」と叫ぶがほとんど聞かれない。アンチ化したファンの誹謗中傷。アツシの弁護は嘲笑を浴びる
・自宅謹慎を命じられたが莉莉亞は恋人のマンションへ押し掛け警備員に摘まみだされる。ラインもメールも拒否される。デートやベッドでのツーショットを拡散してやると脅迫するがすぐに「嘘、そんなのしないから捨てないで」と追伸する。その後、弁護士からの警告メールが来て自分が捨てられたことを知る。打ちひしがれるが「でも仲間や恋人が捨てても自分にはファンがいる」とブログやSNSを見る。そこには狂乱
する莉莉亞ファンやアンチからの罵声の書き込みが
ラクロワのイベント後の控室。「莉莉亞を捨てるの?」と躊躇するチクサに、るうなは「彼女はもう二度と戻れない、私達は手を差し伸べられない」と説く
・莉莉亞を信じるというツイッターのアツシの書き込み。それを見て莉莉亞はアツシの存在を覚える。彼の励ましに「もう一度ステージへ戻ってくる」と誓う莉莉亞(目標の提示)。着る資格のなくなった衣装でTVモニターに映したDVDライブ映像の観客へ向かって歌い始める。最後は潮のような莉莉亞コールとペンライトの光彩の海へ感極まって莉莉亞は飛び込み、モニターと激突する(笑えるシーンだがラストがこれと同じになる)

 

【承】「アイドルの世界へ戻ろうと必死にあがく姿と社会の冷酷さ」
表現するもの「置き去り」「あがき」「弱者叩き」「強がり」


・莉莉亞は自宅謹慎を忘れ(※アルツハイマー)、謝罪したいと事務所を訪れるが入れてもらえない。エントランスで他のアイドルや芸能人、かつての恋人に呼びかけるが無視され避けられる
・その様子がアンチからまとめサイトツイッターに晒され嘲笑の嵐。祭り状態に
・マネージャーからラクロワメンバーに謝罪の伝言を約束してもらい帰宅するが約束は反故にされる
・アツシ、莉莉亞の復帰を働きかけファンクラブを回るが解散や決別宣言ばかり。アツシは彼等の手のひら返しを罵る
・莉莉亞の除名処分が一方的に発表される。焦る莉莉亞はメンバーに取り成しを頼むがラインもメールも拒否される。マネージャーから脱退を勧告され拒否、部屋の中で荒れ狂う・アツシ、イベントで古参ファン「四天王」に協力を依頼するが他の推しへの転向を薦められる
・謹慎を忘れ、莉莉亞は動画で謝罪するが低評価と罵倒コメントで荒れる。言葉でなく歌をと思い立つがアカウントは凍結され、更にマネージャーから連絡で動画利用を禁じられる。カメラオフの状態で涙ながらに莉莉亞は届かない歌を歌う

・異常がなければ復帰の可能性があると説得されて病院で受診した莉莉亞は若年性アルツハイマーと診察される(※病名は記載しないこと)。待合室のTVでラクロワに新メンバー加入のニュース。莉莉亞はショックを受ける
・莉莉亞、失意のうちにプロダクションから違約金の免除を条件に所属を解約させられる。気の毒がったマネージャーから個人的に莉莉亞へメンタルクリニックの薮内を紹介される
・その帰りにラクロワと遭遇、一度は「裏切り者」と罵るが去ってゆく彼等に「許して、もう一度ラクロワに入れて」と泣き叫ぶ
・アツシはファン決起集会を開き、莉莉亞も駆けつける。だが僅かなファンの他は罵倒するアンチとマスコミ、ゴシップ専門の突撃系ユーチューバーばかり。集会は揉め、莉莉亞はアツシに八つ当たり。それを拡散され悪評をさらに広めてしまう。街の雑踏に紛れ込んで見上げた街頭ビジョンに新生ラクロワのイベントと華々しいプロモーション「私を捨てておいて……みんな」と莉莉亞は涙と憎しみの目で見上げる。しかし
ファンと交流するラクロワの姿を見て「アツシが自分の最初のファンだった」ことを思い出す

・アツシ「謝ってる莉莉亞を叩いてそんなに楽しいか、泣いてる莉莉亞を苛めてそんなに嬉しいか」とツイッターで書くが「は?」と取り合われず嘲笑され打ちひしがれる。そこへ莉莉亞から「さっきはごめん…」とメール
・診断時に勧められていたメンタルクリニックへ訪れる莉莉亞。薮内に静養を薦められるは拒む。「このまま時が経てば忘れ去られる、早く光差す場所へ戻らねば」と焦る莉莉亞。
・帰宅するとマンション管理会社からプロダクションからの借り上げ契約打ち切り通告と退去要請。「私、これからどうなるんだろう……」


【転】「どん底に落ちて得た悟り。弱者のための歌姫でありたいという願い」
・アツシらファンがお金を出し合い安アパートへ転居する莉莉亞。またアイドルになれば高級マンションへ戻れるとアツシは励ます。
・オーディションの広告を目にした莉莉亞は「自分には武道館にも立った実力がある。復帰出来ないなら再デビューを」と思い立つ。賛同するアツシらファン達

・莉莉亞はあちこちのオーディションに挑むがどこからも落とされる。醜聞のせいで誰も彼女を認めない
・芸能ニュースの波から次第に莉莉亞の名前が押し出され消えてゆく「はやく…はやく戻らなきゃ忘れられてしまう」
・診療時に薮内が「何故そんなにアイドルに固執するのか」と尋ね、莉莉亞は片親で要らぬ子扱いされ、施
設のTVで見たアイドルの光溢れるステージを見てあの中で生きたいと思い、死ぬような努力でやっと夢をかなえた、自分はあの世界でしか生きられない生きたくないと明かす。
・自主レッスンで振り付けや歌詞を頻繁に忘れるようになる莉莉亞。ステージから離れているせいと強いて思い込む
・莉莉亞ファンは次々と脱落し、ついにアツシだけになる。莉莉亞の診療費、アパートの家賃もアツシ一人の負担で僅かな家財を売っても足りず遂に自アパートも家賃滞納で追い出される。まだそれを知らない薮内は生き急いでいる莉莉亞に別の生き方を諭すよう勧めるが、アツシは莉莉亞が望む道を支えるのが自分の務めだと言い、ファンになった切っ掛けを話す。営業トークの励ましを支えにする寂しい生き方しかない少年
の言葉に胸が詰まる薮内。アツシとメールアドレスを交換し私も莉莉亞ファンになろう、君の相談にも乗るよと励ます。

・莉莉亞、オーディションで他のアイドルの卵達から嘲笑され揉み合いになるが、ただ一人庇ってくれた少女ナナミと友達になる
・オーディションのスタジオで振り付けや歌詞をアルツハイマーのせいで忘れたのを「基礎もなってない」と莉莉亞は厳しく言われ、それを通りがかったラクロワメンバーに見られ、恥ずかしさから逃げ出す

・オーディションのスタジオで振り付けや歌詞をアルツハイマーのせいで忘れたのを「基礎もなってない」と莉莉亞は厳しく言われ、それを通りがかったラクロワメンバーに見られ、恥ずかしさから逃げ出す。
・何をやってもどんなに努力してももうステージに立てないのか…絶望した莉莉亞は雨の中立ち尽くす。開いたスマホにも罵倒や嘲笑ばかり。もう辞めようかなと書き込んだ莉莉亞の前にアツシが駆け付け励ます。「失恋や学校や職場でのイジメで自暴自棄になっていた僕にイベントで慰めて励ましてくれたのが莉莉亞だった。『私が君のファンになってあげる!』って」。アツシから「僕みたいに嫌われてるキモい奴が今日を生きるために、もう一度ステージで歌ってくれ」と励まされ莉莉亞は「何のために歌うのか、誰のために歌うのか、こんなになってやっと分かった」と号泣する。アツシは「一人でもファンがいる限り姫咲莉莉亞は終わらない」と叫ぶ。

 

【結】「利権やヒエラルキーの前に、どんな歌を歌っても願いは結局叶わないという厳しい現実。幻影への投身という切ない幕引き」


・アツシがTV中継もされる公開アイドル・オーディション番組を見つけ莉莉亞に薦める。もう一度光差す場所に戻りたいと莉莉亞は必死に練習する。アツシも協力し、覚えられなくなった振り付けや歌詞を衣装に隠したスマホの動画やテキストで補うなど工夫する
・支払いが出来ないからもう診療を受けられないという莉莉亞に「出世払いでいいから」と笑う薮内。打ち解けたアツシと莉莉亞はオーディションで再デビューしたら先生の歌を歌おうなどと歓談する。
・アツシがホームレスになったと知り、莉莉亞は自分も家賃滞納でもうアパートを出されるけどそれまで同居しようと申し出るものの、またゴシップになると断られる。
・オーディション始まる。莉莉亞は番組の話題集めのため当て馬として出場出来たが、他を圧倒する歌唱で勝ち進む。
・新生ラクロワではコンサートツアーの打ち合わせ中。売上次第で即中止の搾取目的の企画意図を聞かされる中、チクサはモニターに映る莉莉亞に気が付き棒立ち。
・意地悪なインタビューに対して莉莉亞は自分の非を認め「学校で虐められたり一人で生きるのが寂しかったりそんな辛い人の為に歌いたい。慰める人も励ます人もいない悲しい人達の為に」「もう一度私にガラスのくつを履かせて下さい」と、別人のように美しく歌う。エゴに塗れた自分の立場と莉莉亞との違いを感じたチクサは彼女をもう一度ラクロワに迎えたいと叫ぶがプロデューサーの意向やファンの激しい反発を恐れて賛同する者は誰もおらず黙りこくったまま。チクサ(莉莉亞ちゃんは弱い人達のために歌う。でも私は何のために…)と立ち尽くす
・数日後。薮内へ支払いしに来るアツシ。莉莉亞の症状はもう薮内の名前も容易に出てこないほど悪化している。オーディションの結果を聞かれても静かに笑うだけ。支払いも小銭交じり。今までのお礼を言われ不吉な予感がした薮内は何かしてあげられないかと尋ねる。「私のこと、忘れないで」。薮内は莉莉亞の救済の為にあちこちに電話を掛け始める。

・オーディションで莉莉亞を破り優勝した少女は、指示されるがまま莉莉亞の言葉をそのまま盗用し「世の中の辛い人達を力づける歌手になりたい」と抱負を語る。泥のついたシンデレラなんか誰も望んでない、無垢な歌姫しかガラスのくつははけないとプロダクション社長は冷ややかに嘯く。
アルツハイマーラクロワの記憶が朧げに残っていた莉莉亞はプロダクションを訪れ門前払いされる。
・去ろうとした莉莉亞はそこでナナミと再会する。彼女を半ば忘れかかっていた莉莉亞はナナミのデビューを聞かされ「たくさんの人を笑顔にする歌を歌ってね」と祝福する。諦観したような莉莉亞に不安を感じたナナミは莉莉亞がデビューしたら必ずデュエットで歌おうねと約束する
・ナナミから莉莉亞が来たと聞いたチグサは外へ飛び出すが雑踏の中に莉莉亞の姿はなく、立ち尽くすがこれから記者会見と宥められ、肩を震わせながら戻る。

・これらの莉莉亞の行動をアツシは制止せず、望むままにただ付き添っている。寄り添い、行く宛もなく夜の街を彷徨う二人。
・藪内は、アツシのスマホに「ケアのボランティアを紹介する目途がついた。生活保護の人も呼んだ。明日だ、明日まで絶対にお姫様の手を離すな」とメールするが、彼のスマホは契約切れで受信出来ない。藪内は不安に駆られるまま夜の街へ探しに飛び出す
・「また明日何かを考えよう。莉莉亞は絶対いつかまたステージに立てる」と明るく振る舞うアツシに、莉莉亞は城のようなラブホテルを見てに泊まりたいと言い出し、躊躇する彼を慰めるようにして二人は結ばれる
・事後、疲れ切って眠るアツシへ莉莉亞は「最後まで私を信じてくれてありがと……」とキスする。
・莉莉亞は何かに呼ばれた気がして非常階段に出る。夜の街に輝く無数のイルミネーションを眼下に見た彼女は、それが自分を待っているアンコールステージという幻想に囚われ、フェンスを乗り越えるのだった